資料館のかたな③祐光
中央市豊富郷土資料館です。
当館は地元の方から寄贈された日本刀も展示しています。
今回も常設展示コーナーにある刀をご紹介します。
こちらは「備州長船祐光(びっしゅうおさふねすけみつ)」と銘のある脇差です。
「備州長船」は現在の岡山県瀬戸内市長船町で、かつて日本刀の一大産地として栄えた場所です。
そこで刀を鍛えた刀工のうち「祐光」という名前は多数確認されます。
そのなかで「備州長船祐光」という銘を切るのは、文明年間(1469~1487年)を中心に活躍した祐光だけのようです。するとこの刀は今から約550年前の品!
ちなみに、国宝にもなっている「三日月宗近」や「童子切安綱」などは平安時代後期の品と考えられ、今から約1000年前の作品です。
もちろん手入れをしないでずっと美しい状態を保っているわけではありません。
日本刀は鉄製品ですので、放っておけば錆がでて朽ち果ててしまいます。
そうならないように、実は日本刀は定期的にメンテナンスが必要です。
三日月宗近や童子切安綱なども脈々とメンテナンスをし続けたからこそ千年を越えても伝わっているんですね。
メンテナンスは、具体的には、研ぎに出すことに加えて、油の塗りなおしをしています。
日本刀は、刀身が空気に触れないようにするため、ふだん保管する際は油を塗って保管するのが一般的です。
塗るとはいってもごく薄く、ラップが一枚乗っている程度をさらっと塗ってあります。
この油が酸化すると刀身を傷めてしまうので、少なくとも年に一度は油の塗りなおしをします。
時代劇好きな方は、武士が懐紙をくわえて、耳かきの後ろのようなもので刀身をポンポン叩いている場面を見たことがあるかもしれません。
あれは実は古い油を完全に拭きとるための作業です。
あの白いポンポンには、ごく細かい砥石がついています。
最初に布や柔らかい紙で古い油をおおかたふき取ったあと、あのポンポンで砥石を刀身にふりかけます。
そうしてまた布などで拭くことで、刀身に残っている古い油がふき取りやすくなります。
拭きとった後は、刀身に新しい油をさらっと塗って手入れ完了です。
使う油は伝統的に「丁子油(ちょうじあぶら)」を使っています。丁子の油だけでなく、椿油をブレンドして使うこともあったそうです。
当館でも年に一度ほど、湿気が少ない時期に手入れをしています。
運が良ければお手入れしたての刀に会えるかもしれません。