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衝角付冑の模型づくり(秋の企画展「王塚古墳の時代」準備)

中央市豊富郷土資料館です。
2023年9月30日から11月26日まで、中央市教育委員会と共催で企画展「王塚古墳の時代」を開催します。

企画展では古墳から出土した土器や埴輪を多数展示する予定ですが、
王塚古墳から出土した「衝角付冑(しょうかくつきかぶと)」も置こうということで、当館で実物大模型を作っています。

衝角付冑は古墳時代のかぶとの一つで、自転車競技用ヘルメットのような形をしています。前方のとがった部分が「衝角」にあたり、斬られたり殴られたりした時の衝撃を吸収するための部分と言われています。

王塚古墳の衝角付冑は東京国立博物館が収蔵しており、画像がWeb上のデータベースにあります。画像番号:E0128309「衝角付胄」が今回のかぶとです。

『山梨県史』より。このかぶとを再現します。

王塚古墳のかぶとは側頭部から後頭部を横長の金属板で覆う「横矧式(よこはぎしき)」という形式です。地域によっては、三角形の金属板を使うものや、縦長のものを組み合わせるかぶとも出土しています。

8月末、当館での模型作りが始まりました。

もっと規模が大きい博物館などでは専門の業者さんに発注する事もあるかもしれませんが、当館ではほぼすべて自家製です。
館長も学芸員も工作大好きなので、毎回「なるべくお金をかけず、あるもので」模型を作っています。
今回は館内に在庫がたくさんあるボール紙で、ペーパークラフトのような形でできないか?ということで、あれこれ試してみました。

まず、図にあるスケールをもとに各パーツの寸法を割り出します。
鍛造のものをペーパークラフトで作るので、どうしても曲面が必要になります。その箇所は、円すいの側面とみなして計算するなどして、なんとか平面に落とし込みます。

直角三角形の斜辺を求める公式とか、扇型の中心角を求める公式とか
懐かしいものをたくさん使い、平面から曲面をつくる設計図をかきます。

その後、いったんコピー用紙に型紙を起こして組み立てます。

なんとなくかぶとの形っぽくなりそうです。

型紙ができたらボール紙に転写してパーツを切り出し、塗装します。
今回は、塗るだけで金属のように見えるDIY用塗料で塗装しました。

塗装はターナーさんの「アイアンペイント」のアイアンブラウンを使用。
右側が塗装済みのパーツで、ふつうのボール紙に二度塗りしています。
これ紙なんですよ!
照明が当たったところがほのかに光っています。予想以上の金属感♪

びょうの部分は、100均のパール調シールで再現します。

今回はセリアさんのパール調シール(5mm)を使いました。こちらは塗装後のシール。
塗装したボール紙に貼ったところ。ここだけ見ると金属製のびょうのように見えます。
下地のパール感もいい味出しています。

ボール紙の塗料が乾いたらいよいよ組み立てです。紙の厚さがあり、塗料で固めてあるので、コピー用紙で組み立てた時ほどすんなりいきません。
様子を見ながらパーツを切り開き、長さを足し、再び塗装して、形を整えていきます。

手前にくるパーツは内側も数センチ色を塗っています。
パール調シールを貼ったところ。
個数も『県史』などを数えてほぼ同じにしています。
正面から見るとこんな感じです。
内側です。木工用ボンドやクラフトテープ、両面テープなどで各段を貼り付けています。

9月8日現在、かぶと本体が完成しました。可能であればシコロ部分もつけてみたいと思っています。
完成品は企画展で展示します。