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資料館のかたな⑦伝文珠

中央市豊富郷土資料館です。

当館は地元の方から寄贈された日本刀も展示しています。
今回も常設展示コーナーにある刀をご紹介します。

今回は一番上にある刀です。

今回はこちらの無銘刀を紹介します。

反りがほとんどなく直刀に近い姿です。
直刀といえば飛鳥時代や奈良時代の頃の古い日本刀を思い浮かべると思います。当館にいらっしゃる方からも「これは古代の刀ですか?」とご質問をいただく事も多々あります。ですがこの刀は地肌や刃文などの様子から古代のものではなく、近世以降の刀です。流派によって直刀に近い形も作られていたんですね。

この刀、反りが少なく、直刀に近い姿をしています。
昭和36年の日本美術刀剣保存協会の認定書によると、本刀は「無銘 文珠」とありました。

文珠というのは刀工の名前ではなく、流派とまではいかないものの、代々受け継ぐ称号で、現代風に言えばグループ名に近いものです。
「文珠」と呼ばれる刀工たちは主に江戸時代に活躍しており、まず大和国手搔派の弘包からの一派、そして同じく大和国手搔派出身で紀州藩お抱え鍛冶になった重国から連なる紀州の一派です。

どちらの文珠か記載はありませんが、南紀重国の一派は直刀に近い姿の刀を他にも残しているので、もし本当に文珠であれば紀州のほうかも、と何となく思っています。

作業中の伝文珠。みごとにまっすぐです。

日本刀には本刀のような反りがほぼない物もありますが、よく見る刀はもう少し反りが深く入っています。
反りの位置は時代によって流行があります。傾向としては、柄に近い部分が反る(腰反り)刀が最も古く、そこから刀の中ほどが反り(中反り・輪反り)、中央より切っ先側が反る(先反り)という流れです。
反りが違うと、手に持った時の感覚がだいぶ違います。腰反りのものは手元に重心がくるので軽く感じ、先反りのものは重心が高いので振り下ろすときに勢いがつきます。それぞれの時代や人の要請によって反りが変わっていったそうです。

当館の歴史コーナーにある刀たち大集合。
展示ケース内ではバランスを見て刀掛けにかけてしまうので分かりにくいですが、こうして並べてみると反りがだいぶ違うのが分かります。

刀掛けにかけてあると、パっと見た時に反りが分かりにくいですよね。そんな時は、パンフレットやスマホなど、直線のものを用意してください。視線の上で、刀の柄と並行になるようにパンフレット等を傾けて、刀に重ねて見てください。どの部分で一番反っているかが分かりやすくなります。反りの違いで刀を見比べてみても面白いかもしれません。