中央市周辺の山城をみつける 3「獅子頭の遺構」
企画展「駿河への峠道をおさえる中央市周辺の山城」(9月28日より)にさきがける山城紹介のパート2です。今回は関原集落の真南の獅子頭の尾根周辺の遺構(塁址)です。鞍部を渡す土塁と竪堀を基本とするもので、しっかりした郭を備えておらず、一つ一つはとても砦と呼べるようなものではないのです。しかしこの山系の鞍部にはこのような遺構があちこちに見られます。誰が何の目的でこのようなものを構築したのか非常に興味が引かれます。
(上の写真は展示予定の模型ですが、制作途中です。仕上がったものは企画展でご覧ください)。
山梨県埋蔵文化財センターの高左右氏・小池氏と中央市教育委員会の今村直樹氏に同行をいただき昨年11月22日に関原峠周辺の遺構確認をに実施しました。リニアの電源鉄塔工事が山中で進んでおり、城郭遺構の破壊の危険性がないかを調べるための緊急調査でした。林務事務所の許可を受け林道をたいら山の駐車場まで四駆で登り、そこから関原峠までの尾根道を踏査しました。この辺りの山系の尾根には土塁と竪堀のセットが施されている例があることは前から分かっていたので、その点も注意を払って進みました。その結果、峠までの1150mの道のりの間に4カ所の遺構を確認しました。
一つ目はたいら山の駐車場の遺構です。内側は駐車場になっていますが、外側を土塁が取り巻いています。外側(盆地側)に3本の竪堀が施されています。(下の図の左下)図の下に写真を付けましたが、獅子頭周辺の遺構とよく似た構造です。
二つ目は獅子頭南の遺構です。もっとも大きいものです。鞍部を90mほどの土塁が渡り、外側(盆地側)は天然の崖で、竪堀がその端に施されます。内側には腰郭が付きます。ここの特徴は虎口状の遺構が付随することです。長い土塁を渡ってきた者は、ここで屈曲して小郭内に入ります。ここに柵・木戸を備えることで尾根上の自由な往来を遮断することができそうです。その内側には一段高い小郭があります。
外側には高さ2mほどの土塁を屈曲してまわしています。3本の竪堀を落としています。鞍部を渡す長大な土塁とともに、麓からの侵入を防御しています。
獅子頭の東側の鞍部2カ所にも土塁と竪堀のセットの遺構があります。土塁の下には内側と外側に腰曲輪状のものが付随し、外側には竪堀が施されています。
リニア関連工事については、たいら山から右左口峠までは遺構破壊の危険性がないことが確認できました。
今回のブログはたいら山駐車場から関原峠までの1150mの尾根上遺構を紹介しました。峠の東には関原峠の砦、中腹には金比羅山砦・日影山隧道上の遺構・右左口城山・洞山の遺構・五社権現の遺構がありますが、これらとの関係はあるのでしょうか。また、たいら山から西の尾根にも同様の数々の遺構が見つかっています。右左口峠や日影山方面にも見つかっています。次回は、これを、関係史料とともに紹介していきます。