資料館のかたな②守重
中央市豊富郷土資料館です。
当館は地元の方から寄贈された日本刀も展示しています。
今回は、常設展示コーナーにある刀をご紹介します。
こちらは「守重(もりしげ)」と銘のある脇差です。
「守重」はあちこちの流派に比較的多くみられる銘です。
研ぎ師さんによると当館に古刀(慶長年間以前の刀をまとめてこう呼びます)は一振りだけだそうです。銘によるとそれはおそらくもう一振りの脇指である備州長船祐光だから、これは江戸時代以降の「守重」でしょうか。
この刀、銘が折り返されています。
専門用語だと、これは「折り返し銘」と言い、「摺り上げ」をする際にもとの銘を保存するためにこのような措置がとられました。
どういう事かというと、
実は昔、日本刀はけっこう遠慮なく加工されていました。
私たちがズボンの裾上げをするような感じで、入手した刀剣が長すぎる場合は寸法を詰めて使っていたのです。
寸法は数センチ程度詰める時もあれば、太刀を脇指にするなど数十センチ詰める時もありました。
詰める時は切っ先側を切るとその後の処理に物凄く手間がかかるので、たいてい切っ先じゃない側を切ります。
しかし、刀鍛冶が銘を切るのもその部分。数センチ程度であれば銘にかからない事もありますが、十センチ二十センチ短くするとなると、銘は完全に消えてしまいます。これでは誰の作品か分かりにくくなる。そこで「折り返し銘」の処置が登場します。
つまりは銘を切り捨てずに残しておいて後で折り返し、新しい茎(なかご、柄の下に入る部分)にくっつけたのです。
この折り返しのバリエーションも色々あり、完全に切り落としてから銘だけくりぬいて再びくっつける「額銘(短冊銘)」というパターンもあります。もちろん、ひとつながりでいる方が信ぴょう性は高いのですが、中には上手く細工して別の刀の銘をくっつけているような例もあるので注意が必要です。
資料としては、日本刀の実用的側面がわかる良い例でもあります。
普段の展示では、残念ながら折り返し銘が見える側を表にすることが難しい状態です。機会があれば折り返した銘が見られる展示もしたいと思います。